福井健策 弁護士 2012.3.7

Kensaku Fukui, lawyer

研究会「TPP」⑧

司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員

骨董通り法律事務所のホームページ
http://www.kottolaw.com/index.html

日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/03/r00023977/

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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2012年4月号に掲載)

TPP 知財の最適ルールか?

TPPといえば、農産物などの関税問題に関心が集まりがちだが、交渉分野は金融などの国内ルールにも及ぶ。講師の福井健策弁護士が取り上げたのが知的財産面への影響だ。

米国の要求項目には、主に次のものが考えられるという。一つは、著作権侵害の「非親告罪化」。日本では、刑事罰を問うには著作権者からの告訴が必要だ。しかし、非親告罪が導入されれば、捜査当局の判断だけで摘発できる。海賊版の取り締まりには有利となるだろう。

ただ、懸念もある。非親告罪化は過去にも導入議論があり、「同人誌やパロディーが萎縮し、二次創作文化の危機になる」として見送られたという。影響は表現の問題にとどまらず、企業にも及ぶかもしれない。「会社での資料コピーは、私的複製という例外では許されないと解釈されている。小規模な著作権侵害は日常的に行われている」。つまり、社会には大目に見てもらっている部分がある。著作権者が処罰を望まないのに、捜査当局が摘発することの是非も議論になるだろう。

一方、民事の問題が「法廷損害賠償金の導入」。現在の賠償は実損害分が原則だが、「多くは何百円か何千円。裁判になれば費用倒れを起こす」のが実情という。しかし、米国では裁判所がペナルティー的な賠償金を決められる。1作品最高15万㌦(約1200万円)と高額だ。実際、新聞記事の無断掲載で、日本の裁判では1本当たり900円と判断された賠償額が、米国の裁判所では1万㌦だったケースもあった。

ほかに「著作権の保護期間延長」などがあり、講演からは知財ルールの大幅な変更を求められている状況が浮かび上がる。「我々にとっての知財の最適ルールは何か。TPPは(それを決める上での)最適の乗り物なのか」。福井弁護士の問いかけに、TPPにおける報道の役割を改めて考えさせられた。

産経新聞文化部次長  堀 晃和

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